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プロジェクトリーダーから(TRONWARE VOL.47)

 ここのところ多国語コンピュータ関係の会議や打ち合わせで東南アジア諸国に頻繁に出かけているが、8月に中国に行った帰りにたまたま大型の台風に遭遇してしまい、飛行機が飛ばず空港で足止めを食ったことがあった。台風が来ていたために飛行機が飛ばないというのはしかたがないことではあったが、その情報がなかなか乗客に伝わってこない。航空機会社もできるだけ飛ばそうと努力するから情報が確定しないなどいろいろ事情はあったのだろうが‥‥。何百人もいる乗客は、最初のうちはゆっくり構えていたが、時間がたつにつれて情報量が少なくなるという現象が起こったために非常に混乱した。さらに良くなかったのは「情報が少ない」という情報もなかったことが乗客を不安に陥れ、パニック気味であったことだ。最近よく情報過多な時代と言われるが、どうもこのような状況に陥ってみると違うような気がする。何もないところから何かを生み出すことはできないのだから、たくさんある情報の中から選択するほうが本来の姿であるということをつくづく痛感した。もちろん情報が多くなってくれば不確実な情報や怪しい情報が増えていくが、人間は年をとるにつれて情報を選別する能力 をつけていくものであり、情報が多いことはないことに比べれば決してまずいことではないと思った次第である。

 閑話休題。ところで明治10年にできた東京大学は今年設立120周年を迎える。120年記念として10月15日から12月14日まで東京大学の過去と現在と未来を伝えるための大きなイベントが計画されている。実は私はこの東京大学設立120周年のイベントの現在と未来を伝えるための総合プロデューサーを務めている。いろいろな方法を考えたのだが、結局情報をどんどん発信することに重点を置くことにした。つまり、最初に述べたように、東京大学は何をやっているのかどうなっているかを隠すことなく多くの情報を発信していくことが非常に重要だと考え、情報を発信するための道具、例えばそれはデジタルCS放送であり、インターネットであり、その融合であり、‥‥といろいろな媒体を発信するための基地ともいえるドームを東京大学の構内に建設して発信装置を収め、10月15日から2ヶ月間思いきり、さまざまな情報を発信する準備を整えている。そのために夏休みもほとんどなく準備に費やしているが、ちょうどこの号が発売されるころは本番寸前の準備の真っ最中である。ドームの中ではデジ タルミュージアム展、バーチャルアーキテクチャー展で使われた展示カプセル、BTRONを搭載した携帯端末PDAなどもたくさん使われる。公開期間中は誰でもがパビリオンの中に来ることができる。もちろんインターネットを介しても見られるようになっている。動画、音声、静止画、コンピュータデータと膨大な情報を一挙に放出するという実験は見ものである。時間があればぜひ来ていただくか、またインターネットを介してアクセスしてほしい。なお詳細な情報についてはまずhttp://www.um.u-tokyo.ac.jpにアクセスされたい。

坂村 健