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プロジェクトリーダーから(TRONWARE VOL.51)

 近ごろ、世の中の経済状況に連動して、成長産業と目されているパーソナルコンピュータの売行きにも陰りが出てきていると盛んに報道されるようになってきた。一方、政府は経済状況の悪化の打開のために総額16兆円の総合経済対策を打ち出した。その中身の目玉として教育機関への光ファイバー網整備などをうたっているが…。これに対して米国ではいまだパーソナルコンピュータに対する需要は旺盛であって日本とは違う状況になっている。確定申告にも欠かせないし、初等教育のレベルを上げるためにもパソコンは必要である。これに限ったことではないが米国のインフラ作りのストーリーのうまさには常に感心させられる。政府資金を環境作りや動機づけなどに間接的に使うのである。ネットワークに関しても直接的に構築費用を政府が出すわけではない。間接的に環境を刺激して、それが結局経済的状況を好転させ、パソコンなどの需要も伸ばすといった政策。

 ところが日本では不況になってくると国債を発行して、公共事業に投入というワンパターン。借金して資金を投入してそれで物を買いなさいということになる。

 急に予算が組まれるので何のために買うのかという強い動機づけがない。個人的または組織としての動機がないために、「援助金がたまたま来たから」というのが買う動機になってしまう。これはコンピュータに限らず、道路や建物を作る公共事業にも言えることで、必要があるなしにまったく関係なく、予算をぶん取って来たから作るという構図になっている。新聞にも報道されたが、学校に教育用にパソコンを配ったのはいいが、ソフトがないから結局ほこりをかぶっているなどということになる。

 ソフトのための予算はまったく取られていなかったりするからだ。つまりビジョンがない。考えがないのである。

 我が国を電子立国として成長させていく哲学がないのだ。「ソフトなければただの箱」のパソコンだけ配ってソフトなしで平然とされていては困るのである。米国が何でもいいとは言わないが、何かにつけ米国を崇拝する日本なのに、表面的な現象だけ真似て、哲学の部分が抜け落ちているのが私には理解できない。

 なぜパソコンを配ったかというと米国の学校でパソコン導入が進んでいると報道されているからであろうが、パソコンを配る金ではなく、米国米国ではもっとインフラに近いインターネットを引く費用を工面する(教育機関のパソコンは民間からの寄付などで賄うことが多く意外とつつましい)。それも税制などを工夫して、民間企業の全面的な協力の下に行い、政府はまるまる出すのではない。ゴア副大統領が先ごろ次世代インターネットの実用化計画を発表したが、研究開発は国防省の予算を使う一方、ネットワーク自体は民間が協力して提供する。米国は国内ではでは公正な競争を目指して、司法省がマイクロソフトに反トラスト法を適用したりするが、米国国外に目を向ければ自国の持つインフラを拡げるために、世界戦略を進めている。別にこれが悪いと言うのでなく、米国側に立てばあたりまえなのである。

 ところが我が国の政府はこの時代になってすらインフラ戦略の重要性に気がついているとは思えない。もし情報インフラが重要であることは十分承知の上、日本からキーとなるテクノロジーが世界にいまだに何も提供できていないというのが本当に世界第2位の電子立国の姿なのだとしたら、さらに事態は深刻だ。私は15年以上前からインフラとなるべき独自のOSを作ろうとしているが、パソコン時代のインフラであるOSとマイクロチップにはどうあっても独自のものが必要だと信じている。そして気がつくのに遅いということはないと、私は信じている。さて、

 本号の特集は3月に行われた第14回トロンプロジェクト国際シンポジウムからである。TRONプロジェクトは最近は他のオープンなシステムと協力、連携し進めていく姿勢を強めている。シンポジウムの概要とオープンシステムについてのパネルディスカッション2つをお送りする。オープンシステムにも障壁が多く、協力し合わないと普及が進まないことを理解していただけると思う。

坂村 健