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プロジェクトリーダーから(TRONWARE VOL.70)

「最終目標」へ一歩近づく新しい展開

 TRONプロジェクトの推進の中心になってきたトロン協会では、毎年6月が年度初めとなっている。今年は5月31日に通常総会が開かれ、6月から新しい体制でTRONプロジェクトを進めていくこととなった。従来は、いわば個々のサブプロジェクトで部品となるパーツを開発する仕事に力を入れてきたが、TRONプロジェクトの最終目標に一歩近づき、いよいよそれらをネットワークで結んだ組込みシステムの開発に着手することになった。

 今、社会において、組込みシステムがパーソナルコンピュータと同等あるいはそれ以上に重要であるということは、広く認知されてるようになった。現在は家電など民生用も含めて、数多くの組込みシステムやインテリジェントオブジェクトとも言えるモノが世の中に出回るようになってきた。それらは、我々の当初の予測どおりで喜ばしいが、次の段階としてはそれらがネットワークで結ばれて互いに情報をやりとりしていく、あるいはサブシステムどうしを接続して協調分散型のシステムを構築していくなどの方向性が考えられる。

 ネットワークとしては今、これだけ整備されてきたインターネット網を使わない手はない。だが、インターネットを利用する場合、一番大きな問題はセキュリティがなく無防備なことである。世界のインフラとなっているインターネットを使わないことは考えにくいので、インターネットをいかにセキュリティの高いネットにしていくかという方向のシステム開発が盛んになっていくのは間違いないだろう。

 TRONプロジェクトでは新たにセキュリティの不完全なネットワーク上で安全にコンテンツを移動させるテクノロジーを提唱し、開発を始めている。それが、eTRON、つまり、entity-TRONである。これにより、貨幣価値やコンテンツなどを含む無形財産をセキュアにネット上でやりとりできる。もうひとつは、ITRONなどで問題だと言われていたことだが、普及政策として今まで“弱い標準”を推し進めてきたために、各インプリメンテーションの微妙な違いにより、プラットフォーム上で動作するミドルウェアの流通がいまひとつであったことがある。 これからはOSカーネルも大事だが、周辺機器からネットワーク、セキュリティ、ユーザーインタフェースなどなどさまざまなミドルウェアが欠かせない。そこで、今後ミドルウェアの流通性の向上を目指し、T-Engineという共通プラットフォームを広めていく。つまり、弱い標準から少し強くした標準へ、T-Engineというハードウェア・ボードをベースとした参照プラットフォーム上でミドルウェアの流通を促進する。このように、6月のプロジェクト推進委員会で決定された。

 超漢字/BTRONにしても、軽い省資源で動くプラットフォームとしての認識が高まり、アプリケーション開発が活発化してきている。今後21世紀のTRONプロジェクトの新しい展開に注目していただきたい。

坂村 健