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プロジェクトリーダーから(TRONWARE VOL.76)

T-Engineで日本の電子産業、先端技術に貢献

 昨年に開始したT-Engineプロジェクトの概要が固まり、協力してくださる方々も増えたので、推進団体としてT-Engineフォーラムを結成することになった。6月24日に設立総会が行われ、当日までに思いのほかの22社もの参加をいただき、発起人としてたいへんうれしく思っている。サポートするマイクロプロセッサは、 SH、M32、ARM、MIPSと、組込み用のほとんどをカバーするようになった。

 まずは、実際に実装されたT-Engineボードが作られ、プロジェクトが一歩進んだことを喜びたい。今後この上で動くミドルウェアが多く生まれてくる。現在、T-Engine+T-Kernelの上で動くミドルウェアを、アプリケーションを開発する人たちにリリースできるように、開発メーカーが年末のTRONSHOWに向けて準備を進めている。実はこれらミドルウェアの中にはすでに応用ソフトの開発に使われているものもあるが、誰でも安心して使えるようになるのは今年暮れになる。

 T-EngineやT-Kernelが今までと異なるのは、標準ハードウェア上に標準リアルタイムOSを規定し、その上で動くミドルウェアの流通の活発化を意図しているとともに、ユビキタス・コンピューティングの時代にはセキュリティが組込み分野でも必須であることを見越して、 eTRONというネットワーク向けのセキュリティアーキテクチャに対応していることにある。

 新しい技術を導入する場合2つの流れがある。組込み分野でも、オブジェクト指向やアスペクト指向などに基づくアーキテクチャをまったく一新したシステムも現れてきている。まったく新しい技術は進歩のためには欠かせないが、組込み分野では資源も少なく、実行効率が非常に重要なため、枯れた技術の進歩もまた重要である。さらにリアルタイムで動かないと意味がない。我々のアプローチは、いっさい白紙にしてまったく新しいアーキテクチャを構築するのでなく、確立されたオーソドックスで安定した技術の上に新しい血を導入していく方法論をとっている。 それが日本の電子産業に最も最短で貢献すると考えている。

 T-Engineは、もともとユビキタス・コンピューティングを普及するための基盤プラットフォームとして考えられたが、ユビキタス・コンピューティングに関する報道も増え、爆発的なブームも近づいている。ユビキタス・コンピューティングは、今までのコンピューティングとは応用モデルが異なり、パラダイムチェンジを起こすが、詳しくは私の『ユビキタス・コンピュータ革命――次世代社会の世界標準――』(角川書店)を参考に読んでいただきたい。このような新しいプラットフォームとプロジェクトを私たちが世界に先がけて起こし、先端技術に貢献できるのを誇りに思う。

坂村 健