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プロジェクトリーダーから(TRONWARE VOL.98)

組込みシステムやユビキタスID技術への理解を期待し

 本号はT-EngineとユビキタスID技術に関する入門特集である。2002年にT-Engineフォーラムが結成されてから、まもなく4年がたつ。この間に我が国で使われている組込み用マイクロプロセッサのほぼすべてをサポートし、対応ボードが発売されている。

 T-Engineという共通基盤の下でリアルタイム組込みシステムの開発ができるような準備が周到に整い始めた。また4年の間にT-EngineボードやリアルタイムOS T-Kernelばかりでなく、多くのミドルウェアや開発環境の整備が進み、無料、有料を問わず、さまざまなものが手に入るようになってきた。ずっとこの分野にかかわっている人もいれば新たに入門する人は常に存在する。また、一時遠ざかっても再入門しようとする人もいる。そのような人々に最新の情報に基づいたガイドを提供することが必要だ。

 TRONWAREでは、ここ数年、4月に発売される号ではフレッシュマンのための入門特集をやっているが、毎年、製品は増え続け、実際に試すのも簡単になってきている。基本的なものから機能が豊富なものまでバリエーションも広がっている。

 組込みリアルタイムシステムの開発はなかなか敷居が高く、誰でもがデジタルカメラやデジタル音楽プレーヤーや携帯電話を開発するわけではないだろう。パソコンやネットワーク分野に比べるとかかわっている人間が少なく、良質な参考書が少ない。また、組込み機器では周辺インタフェースに関する情報もパソコンのように標準化されているわけではないので、非常に重要である。本号のような入門ガイドから少しでも役に立つ情報が得られることを期待している。

 一方、ユビキタスID技術に関しては、ユビキタス・コンピューティングの本質は状況認識技術にあることが理解され、RFIDの応用=ユビキタス・コンピューティングとは誰も思わなくなり、誤解は徐々に解けようとしている。それでも現実にある応用を考えた場合には、モノとか場所といった応用に絞ったほうが、ユビキタス・コンピューティングを現実に役に立つシステムとして実現できることもわかってきた。応用も食品トレーサビリティや誤投薬防止、もちろんサプライチェーンマネージメントなどさまざまな用途に使えることがわかってきている。私たちはucodeという世界に2つと同じ番号がなくそれ自体には意味を持たせない認識コードを推進しているが、このucodeに興味を持ち、研究所には毎日海外から訪問される方が絶えない。私たちの活動も世界に知られるようになってきたようだ。

 ユビキタス・コンピューティング技術は、組込み以上に発展途上の分野なので、入門書は非常に少なく、実務に結びつき、実際に試せるものはさらに限られる。本号では概念を説明するだけでなく、具体的にどうするのかにも触れ、私たちが研究開発して実際に持っているユビキタス・コミュニケータやUC-Phoneといったデバイスに関しても、発展途上のものも含め詳しく紹介するようにして、役に立つような情報を提供できることを心掛けた。

 本号をきっかけとしてT-Engineをはじめとする組込みシステムや私たちの進めているユビキタスID技術への理解が深まることを望む。さらにT-Engineはユビキタス・コンピューティングの構築を目標としたプラットフォームであり、新しい21世紀のユビキタス・コンピューティング時代の組込みシステムが広がっていくことを期待している。

坂村 健